ストレッチング-stretching
前回書きましたように、ブルース・リーに憧れた私は身体改造を図ることにしました。
当時、ブルース・リーの体に憧れたのは間違いないのですが、最も驚異的に感じたのはその蹴り技です。あの蹴り技をなんとしても真似してみたいと思った私は、柔軟体操を行う必要性を感じました。
本来は空手道道場で技を磨くべきなのですけど、私が住んでいた地域ではそのような場所がありませんでした。そこで私が選んだのは、雑誌の広告に出ていた「中国武術」の「通信教育」(笑。実はこのテキストの中に「真向法」のいくつかの技術が「柔軟体操」として紹介されていました。後で真向法の解説書を入手したときに、通信教育のテキストに紹介されていた技法はすべてが真向法のものではなかったことがわかりましたけど、当時の私にはこれだけが頼り。
最初は、両足の裏をくっつけて股関節の方へ引きつける座法をとったとき、両膝が下がらずがっかりしたことを覚えています。しかし「毎日1mmずつ開いていけ!」みたいなアドバイスが書かれていたので、マジメに続けていたら、1年後にはかなり柔らかくなりました。
そして、高校に進学していよいよ空手道部に入部と相成るわけですけど、中学時代から続けてきた真向法(もどき)によって私の柔軟性レベルは当時空手道部で最も可動域が高い先輩とすでに同等のレベルに達していました。結果、蹴り技の上達は部員の中でも最も速く、また部員の中で一番高いレベルまで達することができたと思います。
ただ、相変わらずの運動神経の鈍さなので上半身の技や型や組み手で登場する技の習得や、柔軟性以外の体力の向上については最も遅かったのが事実。もし、柔軟性に自信がなく、蹴り技すら習得できないような状況であれば、私は3ヶ月も部活動を続けていられなかったでしょうね。
部活動の在籍期間には、当時中学で陸上競技をやっていた弟から陸上競技の専門誌を借りたりしていました。当時としては斬新な筋力トレーニングプログラムが乗っていたり、少し前からはやり始めた「ストレッチング」プログラムが掲載されていたからです。ボブ・アンダーソン氏の著書のブームにいち早く反応したのが当時の陸上界だったと記憶しています。私の柔軟体操プログラムは真向法に加え、ボブ・アンダーソン氏が紹介した「スタティック・ストレッチング(static stretching) = 静的なストレッチング」の手法を加え、より多角化していき、効果も上がりました。高校3年生くらいになると、もう体操部の女子選手と同等レベルともいえる股関節の可動域を持っていたと思います。
20代前半くらいまでの蹴り技は相当自信がありました。いろんな方とスパーリングしたのがきっかけで「テコンドーの強化選手を申し込んでみない?」というような話をいただいたこともありました(そのときに応じなかったことを後悔しています)。こんなこともあって、私の柔軟性を高めるきっかけになった「通信教育」と「真向法」には本当に感謝したものです。
私の蹴り技が最高レベルだったのは30代前半だったと思います。ただ、関節可動域については、全盛期を少し下回るようになっていました。そして、30代半ばに参加したある機能改善の施術セミナー受講時、その実習で若い女性インストラクターとペアでのトレーニングをしたとき、彼女の補助のタイミングと私の動作が合わずに、右の股関節を「グキッ」とやってしまいました。
股関節の痛みでキックも開脚もできなくなり、あっと言う間に私の股関節可動域は失われてしまいました。やはり、ストレッチングを継続することは股関節のコンディションや蹴りのフォームを維持するために重要なものであることを痛感した次第です。
強い痛みはなんと数年間にもおよび、ある程度の股関節ストレッチングができるようになったのはこの2-3年のことです。最近は可動域も少し回復して、ハイキックも改めて打てるようになりました。
このように、コンディショニングとしてはすばらしいストレッチングですけど、従来言われていた準備運動としてのスタティック・ストレッチングは十分に注意した方がいいでしょう。ストレッチングによって筋肉がリラックスしすぎたり、あるいは筋線維(筋繊維)が伸びたままになってしまうことで、実際に動くときに張力が不足し、かえってパフォーマンスを落とす場合があるからです。
また、事前の伸ばしすぎで筋線維が傷つき、練習中や競技中の「肉離れ」「筋断裂」を助長する可能性もあります。
このようなことから、最近ではストレッチング不要論もささやかれたりしますけど、「練習(practice)」だけでは柔軟性の維持、向上は正直難しいです。「練習だけで得られる筋力は十分ではないため、筋力トレーニングを行う」というのと同様、高度な関節の可動域が求められるスポーツでは、ストレッチングは不可欠だと思います。
従来知られた方法に何か「ネガティブ」な要素が見つかると、それを叩いて話題性を高めるのはいいのですが、だから「不要」とするのはちょっと極端かな、と思います。私は「極端さ」を好まないので、自分に必要なものをバランスよく取り込む方を選びます。
今の私はスタティック・ストレッチングだけでなく、弾みや反動をつけるダイナミック・ストレッチング、受け身のパッシブ・ストレッチングなど、いろいろなものを組み合わせて行っていますよ。筋肉だけでなく、関節を刺激するようなリズミカルな動作も加えたりしていますが、ストレッチングを初めてからの数十年、プログラムは実はほとんど変わっていないことに気づかされたりもします。
柔軟性に関心を持ったきっかけであるブルース・リー先生、通信教育テキストの中の「真向法」には感謝しています。
[...] 先日「ストレッチング – Stretching」の項で書きましたけど、私の最初の体作りのためのプログラムは「ストレッチング」であったといってもいいと思います。そして、最初に参考にしたのが中国武術の通信教育テキストの中に紹介されていた「真向法」です。 [...]